u3000言葉が通じるとしたら、私は、今、この捕虜たちに向つて何を云つたであらう? u3000およそ憐憫とか同情とかいふ感情が、この場ほど当てにならぬことはない。人間の本性が如何に強くても、戦場の生理は動くところへ動いて行かねばならぬ。文明とか、野蛮とかいふ言葉がうかつに使へない、どぎつく且つ微妙な秩序が、既におのづから戦ふものゝ精神のなかに形づくられてゐるのである。理窟は「勝つために」ではない。「生きるために」である。この絶対な理念を超えて、人生の真実はない。戦争の偉大な教訓は、たゞ厳粛なこの真実のすがたのなかにある。 u3000一人の兵士が私に説明した。 「敵兵と良民とを区別せよと云はれますけれども、かうなると、調べやうがありません。なんとしても証拠があがらないんですから。時には、大勢の捕虜を並べておいて、住民の一人二人に、蔭で訊ねてみます。戸の節孔から何番目何番目といふ風に、撰り分けさせます。それでも当てにならないことがあります。前に帰順した敵の将校などを道案内に連れて来ると、さういふ時、並んでゐる捕虜の前で、不意に号令をかけさせてみます。『気をつけツ、敬礼ツ』とやるんです。根が兵隊なら、思はず知らず、不動の姿勢をとつて、手を挙げちまひますよ。はゝあ、あれだなと、見当がつくわけです」 u3000私は、まさかとは思つたが、それも面白い話だから黙つて聴いてゐた。 「今日みたいに暇ができると、捕虜もゆつくり調べられますがね。前進前進となると、いちいちかまつちやゐられませんからね」歯学生の質問掲示板u3000定期試験・進級・CBT・歯科医師国家試験対策
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نویسنده: miu