そして、折鞄から小切手帳を出して、その場で二千何百円という小切手を書こうとするのを、京野等志は、そんなものは絶対に受取らんと断つたのである。警官も仲に入り、押問答の末、彼はやつと住所姓名だけを明かして、さつさとその場を引きあげた。が、さつきから交番の外に、紳士の連れらしい若い娘が、手持不沙汰そうに、時々、からだを左右にねじり、手に提げた買物包みを、長い袂といつしよに大きくゆすぶつているすがたが眼についていた。二つに編み分けたおさげの髪が、まだ初々しい肩先に軽く垂れ落ちて、薄い藍地の和服だけが、妙に大人つぽくみえた。と、交番を出る時、彼は、その娘が自分にお辞儀をしたように思い、こつちも、慌てて帽子に手をかけた。視線が合つたのは、ほんの瞬間であつた。彼は、むしろはつきりとその娘の顔をみた。薄暗い光の下で、それは、絵に描いたような美少女であつた。 u3000それから二三日して、彼の留守中、味岡正造という名刺をもつた使いの者が、菓子折と、別に寸志と書いたノシ袋を置いて行つたことを知り、彼は、その「寸志」の方を、自分でわざわざ返しに行つたのである。はじめ玄関へ出て来たのは例の娘で、すぐに奥へ母親を呼びに行き、しばらく、受けとれ、受けとらぬの騒ぎを演じた末、ではもう一度主人に相談して、ということになり、この時、彼は、その娘のどことなく好もしい印象を心の奥深く刻みつけたのである。八王子市u3000リフォーム
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نویسنده: miu